「World Of Music」

SL-782007-11-25



1.World Of Music(intro)
2.運命
3.Reason(Let U Know) feat.Simon&D.O
4.Top Of The World
5.Back Stage Boogie feat.Bes,565&Uzi
6.Not Your Boyfriend feat.Jesse(RIZE)
7.We Leanin'
8.Shinin' Like A Diamond feat.Sphere of Influence&May J.
9.Stop Playin' A Wall
10.This Is 4 The Locos feat.DS455&Big Ron
11.360° feat.OJ Flow,KM-Markit,Aktion,Braidz,Gotz&Uzi
12.Lyrical Gunman
13.Everybody Needs Love
14.My People feat.加藤ミリヤ
15.雲の上のHeaven
16.Last Song

原点に立ち返り、ノブレス・オブリージュを全うした前作に次ぐ一手として、音楽性における拡張路線を採ったのは妥当な判断だろう。そしてその狙いは大方成功しており、彼らしく貫禄に満ちたラップと持ち前の器用さで、レゲエにウェッサイ、挙句はラウドロックといった多様なエッセンスをモノにしている。中でもHASEBEによる大ネタ使いがキャッチーなM8などは一際耳をひく。さらに、もうひとつの新たなトライとして、SIMONやBESら新世代MCとのコラボが挙げられる。そしてそこでも彼は、若手に見劣りしないパワフルなパフォーマンスをしっかり誇示している。かように優れたハードを備えながら、どこかひっかかりがなく、端的に言うと飽きやすい印象が残るのは、先述のような試みが、ある意味アナクロとも言えなくもない彼の大仰なリリックセンス、つまりソフト面の浅さ(いや、彼は本来これでいい筈だが)を図らずも浮き彫りにしているからだろうか。だからM13のようなコンシャスネスも妙に鼻につく、と。この実に高次元なジレンマ・・・やんぬるかな。

「DYNASTY-23 ANTHEM-」

SL-782007-11-15



1.Champion / ICE DYNASTY
2.Shining Stone / ICE DYNASTY
3.My Men(In My Wallet) / ICE DYNASTY
4.GANGSTA HUSTLER / SMOKE=$
5.HOT BOX / ICE DYNASTY
6.現場Remix / ICE DYNASTY
7.ハコイリ娘 / ICE DYNASTY
8.STYLES G / G.O
9.Sunday Morning Magazine / ICE DYNASTY
10.SKY THE LIMIT(FUCK そのジェラシー) / OHLI-DAY
11.RAP STAR / ICE DYNASTY
12.URBAN SUBURBAN / 1 DA MANSION
13.Tell me… / ICE DYNASTY

ワルそうな風貌から察せられる通り、彼らの音楽性を一言で表すとストリート色の濃いハーコーラップということになる。しかしその内実はベタなギャングスタ集団ではなく、例えばSMOKE=$がサグ全開なのに対して、1 DA MANSIONはチャラいノリだったり、一方で正統派のG.Oがいたりと、クルー内に毛色の異なるユニットが並存することで、図らずも躍動感を体現している。また、金・女といったお決まりのトピックが、根拠なき勝ち上がりイズム一辺倒でなしに、あくまで素の日常の延長線上で「敢えて」ドラマチックに描かれているあたり実にアップトゥデートで、中でもOHLI-DAYなどなかなかのリリシストだ。派手目のトラック群はTiny VoiceのUTAという意外な人脈の関与も手伝って、メジャー仕立てで彼らのもつ戯れ感をうまくパッケージしている。総じてやや装飾過多気味ではあるが、今もっとも興奮に値するマイクリレーがここにはある。

「街風」

SL-782007-11-05



1.INTRO
2.FLIP DAT
3.MIC STORY feat.ILL BOSSTINO
4.ガリガリボーイズ feat.四街道Nature
5.煙玉
6.LOVE&HATE feat.BES,SMIF-N-WESSUN
7.BAD TRIPY feat.BAY4K,OKI
8.DICK RIDER
9.NO PAIN ,NO GAIN feat.D.O
10.AROUND MY WAY
11.TECHNIC feat.KREVA
12.迷いの森 feat.K.N.Z
13.山手通り feat.仙人掌
14.WE BE SMOOTH feat.L-VOKAL,luna
15.街風 feat.GANGSTA TAKA,STICKY,NORIKIYO,4WD
16.MUSIC
17.また不定職者 feat.BES,漢

リリック・フロウ両面から日本語ラップの可能性をシフトした傑作「花と雨」から1年と経たぬうちにリリースされた本作は、BOSSとKREVAの参加に象徴されるように「シーン」を強く意識した感が強い。結果として、従来は私的なストリートライフやハスリングがメインテーマだったのが、このアルバムでは日常描写もさることながら、現実に照らし合わせたうえでの自己言及が主なトピックとなっている。それはあたかも、孤高のヴァイリンラッパーだった彼が、前作で得たプロップスを踏まえた上で、今一度MCとしての自身を相対化しているかのようだ。リスナーの立場からスリルやカタルシスを期待すると少々肩透かしを食らうが、ラップゲーム的な醍醐味は随所にきっちり用意されているし、何より自己表現の隘路を回避する節目としてうまく機能している。多様な試みの中で、M3とM11の純度が突出しているのは、パイオニア同士のなせる業というべきか。

「FEEL OR BEEF」

SL-782007-10-09



1.Intro feat.DJ ISSO
2.Everytime Everywhere feat."A"THUG&BES
3.Whole City All City feat.BRON-K
4.I’m So Fly feat.STICKY&ESSENCIAL
5.後の祭り〜FUCK DA “P”03〜 feat.K-NERO
6.Slip feat.SEEDA
7.挨拶 feat.鬼
8.ちょけんねん feat.神戸薔薇尻
9.Jungle Fever feat.GANGSTA TAKA&BEBE
10.Never Change feat.bay4k
11.朝方の路上feat.OKI&SEEDA
12.Outro
13.In Dro Remix

SCARS所属トラックメイカーのファーストリード作品。客演陣の顔ぶれからも推せるように、基本的にはSCARS〜SDP周辺特有のストリート感やリアリズムを受け継いだソリッドな作風で、「THE ALBUM」のスピンオフとでも言えそうな一枚となっている。彼の作る音はシンプルなビートをベースとしながら、どこか映像的というか表情が明快で、グルーヴ感に溢れるというわけではないがラップがよく映える。中でも特に、M3のような淡々と抑え気味のスタイルとの相性は抜群だ。他にもNORIKIYOの回想が鬼気迫るM5や、bay4kのいつになく繊細なフロウがハマるM10など、いずれの曲においてもサウンドが出しゃばることなくMCの持ち味を引き出しており、センスのよさが光っている。知名度からかさほど話題にこそなっていないが、総じてモストアンダーレイテッド有力候補の良コンピといっていいだろう。

「ONE MIC」

SL-782007-10-02



1.ONE MIC
2.悲しみにさよなら feat.Full Of Harmony
3.Don't Stop
4.ONE LOVE feat.清水翔太
5.TURN IT UP feat.VERBAL,LITTLE,KOHEI JAPAN&青山テルマ
6.童子兄さん
7.Play That Beat feat.ZEEBRA
8.本気
9.SAGAMI feat.TIPTOP!&KEY-CREW
10.Special Girl feat.HI-D
11.summer days feat.安良城紅
12.Z I N G I
13.PEACE
14.光る未来 feat.加藤ミリヤ
15.Best Friend feat.Mummy-D&JUJU
16.続少年A

元来、童子-Tは「雰囲気」で聴かせるタイプのMCと言えよう。けっして華があるわけではないが、しばしば「いぶし銀」などと形容されるその渋味を、アトミックボム時代はシリアスな芸風で活かしてきた。ところが、移籍後初の本作では、先行シングル群を筆頭にシンガーを多数起用、トラックもキャッチーなものが主体で大きく趣向を変えている。ハーコーなスタンスを貫いてきた数少ないメジャーアーティストである彼が、ブレークスルーを試みるに当たってこうした転身を厭わないことは評価すべきだろう。内容的にも各曲一定のクオリティに達してはいる。が、いかんせん意あって力足らずというか、先述のような自身のキャラが満艦飾のサウンドに少々埋没気味で、相性の問題とは思うが、勿体無いところ。M4の清水翔太やM9参加のクルーのような魅力的な若手のフックアップをきっちり果たしているあたりは頼もしい。

「Hysterical」

SL-782007-09-13



1.INTRO
2.0%
3.星を願う
4.FULL MOON(I'm Sorry)
5.1 for DA 何?
6.十字架の上(Power Of Love)
7.It's a One Day
8.How High(No Joke)
9.AHH YEAH
10.Love vs Hate(My Lover)
11.ああだのこう
12.ヒステリック
13.SANDER
14.I LV U
15.メメント
16.J.O.K.E.
17.EXODUS(大脱出計画)
18.BYE BYE

一流のアーティストにとって、期待に照準したクリエーションでニーズをそこそこに満たすのはさほど難しいことではない。しかし今回MACCHOは敢えてそれをやらず、前作で完成形をみた従来のスタイルをキッパリ捨て、とかく「タフネスへのこだわり」を主張することにプライオリティを置いてきた。それゆえ、あらゆる面でリファインされていたPMX主導の仕事に比べると、終始ピーキーなラップはやや大味で聴き手にそれなりのスタミナを要求する。ただ、こうした変化は自己表現の追求における必然のステップとも言え、認めないことにはリスナー共々成長を見込めまい。少なくともDABOの4thより潔い振れ切り方だ。あたかもパンクのように漲る反骨精神がハマったM3やM4が前人未到の強度を誇示する一方で、全体としては表情が画一的なのが惜しいところ。あと語尾を上げるフロウは少々好みのわかれるところかも。

「EXIT」

SL-782007-08-27



1.INTRO
2.RAIN feat.SEEDA
3.DO MY THING scratch.DJ ISSO
4.いつもの話 〜BUTTER〜 feat.BRON-K,WAX,TKC
5.SKIT
6.黄昏公園
7.23時各駅新宿
8.KANAGAWHAT!! 〜STAND UP〜
9.IN DA HOOD
10.成田発 KUALA LUMPUR 2002便
11.RODEO CHASIN’ feat.GANGSTA TAKA,STICKY
12.2 FACE feat.BES
13.BULLSHIT feat.SHIZOO
14.NEXT

ヒップホップにおいて音楽性を増すことと、「リアル感」は往々にして相反関係にある。だから、たとえばMSC(特に漢)は、徹底的にヴァイブスを廃することで裏街描写を実現している。そこを上手く両立させたのがSEEDAの「花と雨」だが、あのスタイルはあくまで突然変異的なものだ。そのSEEDA周辺のMCであるNORIKIYOのファーストアルバムは、ごくスタンダードなアプローチながら先述の両要素を兼ね備えたハイレベルな一枚となっている。それはひとえにパンチのある声質ではないが巧みなフロウによるところが大きい。そしてなにより過剰な自己言及や演出よりも、身近で生々しいトピックを主とするリリックは、今のストリートの気分によくマッチしている。BACH LOGICによるドラマティックな楽曲群もいいが、シンプルなビートを淡々と乗りこなすM3やM9のがむしろ新鮮。またI-DeAの哀感溢れるトラック上で脇役に徹したBESが華を添えるM12は本作最大のハイライトと言えるだろう。